ジャン=マルク・ビュスタモント展 プライベート・クロッシング
2002年7月28日(日)~10月6日(日)
フランスを代表する現代美術作家。
日本で初めての本格的な個展。
時間が止まったような何気ない風景の写真。
アクリルを使った立体作品のシリーズや鳥かごの中に生きている小鳥を入れた作品もあった。
■展覧会概要
ジャン=マルク・ビュスタモント(1952年、トゥールーズ生まれ)は、フランスを代表する現代美術作家である。1986年のヴェニス・ビエンナーレへの参加によって国際的な舞台に登場し、87年以降ドクメンタ(ドイツ・カッセルで4年に1度開催される国際美術展)に連続して選抜されており、彼の作品は今日の美術を概観する上で欠かすことの出来ないものとなっている。最近の主な個展に、98年のテート・ギャラリー(ロンドン)、99年の国立写真センター(パリ)がある。2003年に開催される、第50回ヴェニス・ビエンナーレでは、フランス代表の作家として出品が決定している。
ビュスタモントは、横浜美術館で97年に開催されたグループ展「現代の写真Ⅰ 失われた風景-幻想と現実の境界」の出品作家の一人。その際の出品作で、今回の展覧会でも重要な位置を占める「タブロー」シリーズ(1977年~)は、自然と都市、あるいは自然物と人工物の入り交じった、比較的ありふれた場所で撮影されている。「絵画」という意味もある連作「タブロー」を通じて彼は、写真を絵画のように額の中に入れて展示するとともに、人間の周囲の環境をありのままにとらえて描くという、かつては絵画が担っていた役割が、写真に取って代わられたことをあらためて物語る。一方で彼は、特定の対象を「客観的な真実」としてレポートしようとするこれまでの写真のあり方を疑い、何気ない日常の風景に注がれる個人的なまなざしを重視する。このような彼のものの見方は、現代の美術と写真の表現にたいして強い影響を与え続けている。
展覧会のサブ・タイトルにある「プライベート・クロッシング」という言葉には、ビュスタモントの作品に見られる様々な表現分野(写真。ドローイング、立体)をはじめ、素材(印画紙、スティール、アクリル等々)と彼自身との私的な交感といった意味がある。同時に、作品が作家の手を離れ、公的な場に展示されたりすることで生じる、鑑賞者と作品との新たなる対話もまた、この言葉には込められている。また、ビュスタモントの写真作品に「S.i.M.(サムシング・イズ・ミッシング)」という連作があり、そこではパブリック・スペースでありながら、そこに集う人々の間にはお互いを結びつける「何かが失われている」ことをテーマにしている。ビュスタモントの作品には、歴史的な証言者となるような経験だけではなく、孤立化した日常の中の極めて私的な経験、それも他人から見ればささやかで、場合によっては理解されないような行為を通じても、世界の深い理解に繋がっていくことを伝えようとしている。
本展は、作家の全貌を紹介する回顧展として企画され、写真による彼の代表作の数々に加えて、オブジェ、インスタレーションなど合計約80点から構成される。
https://yokohama.art.museum/exhibition/200207_bustamante/
■仕様
246×195mm 760g